気候変動が会社経営にもたらすそれのある物理的インパクトおよび移行リスクに鑑み、MPI Corporationは、「気候関連財務情報開示タスクフォース」(Task Force on Climate-related Financial Disclosures, TCFD)が提言するマネジメントフレームワークを参考に気候リスクマネジメントを行い、このマネジメントフレームワークを気候リスクマネジメントメカニズムおよび適応戦略の根拠としています。本フレームワークは、ガバナンス、戦略、リスクマネジメントならびに指標および目標の4つの要素を含み、会社による体系的な識別および評価をサポートして気候変動に関係する財務インパクトに対応します。
MPI Corporationは、2022年からカーボン・ディスクロージャー・プロジェクト(CDP)に参加して環境情報を開示しており、2024年にBスコアの評価を獲得しました。引き続き気候変動に関するリスク評価および対応戦略を深化させて十全なリスクマネジメントメカニズムを導入し、サプライチェーンの持続可能な成長を確保していきます。
リスクの内容 | リスクレベル・期間 | |||
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リスク | 移行リスク | 政策・法令 | 国内におけるネットゼロ政策推進および国外における国境炭素税の徴収に対応するため、今後炭素コストが上昇して経営コストが増加し、利益構造に影響を及ぼす。MPI Corporationは、あらかじめ温室効果ガスマネジメントに関する戦略およびコンプライアンス作業を策定して政策のインパクトを回避する。 | 影響の程度:高 経営コストが大幅に上昇するおそれがあり、製造プロセスおよびサプライチェーン戦略の調整が必要 リスク期間:短中期(1~3年) 多数の法令が公布前または移行期であるが、すでに段階的に推進されている(例:炭素費用、カーボントレーディングなど) |
技術 | 製造プロセスの低炭素化のトレンドに対応するため、エネルギー消費量の多い設備の置き換えおよび省エネ技術およびスマートエネルギーシステムの導入が求められており、初期資本的投資が増加するほか、技術・研究開発投資の圧力が高まるおそれがある。 | 影響の程度:中 技術転換に必要な資本的支出および学習曲線において課題が存在しているが、時間の経過とともに段階的に改善が可能である リスク期間:中長期(3~5年以上) 技術の発展と導入に時間を要し、効果と報酬が直ちに現れるとは限らない | ||
市場 | グローバルサプライチェーンのESGに対する要求が高まり続けており、会社がカーボンマネジメントのパフォーマンスを改善し続けることができなければ、ESG調達の基準が変化する中で今後グローバル大企業のサプライチェーンに加わる資格を失い、潜在的な市場開拓チャンスに影響するおそれがある。 | 影響の程度:低 短期的には受注への影響は限定的である。しかし、グローバルブランドのサプライチェーン選定において、ESGが重要な参考基準になりつつあり、市場におけるサステナビリティパフォーマンスを向上させ続ける必要がある リスク期間:長期(5年以上) MPI Corporationは、ESG調達の転換のトレンドに対応し、今後も市場競争力を保つ必要がある | ||
のれん | 気候変動対策およびサステナビリティの取り組みに対するコミットメントを示し続けることができなければ、徐々に当社の姿勢に対する外部のステークホルダーのイメージに影響を与え、ESG格付けの引き下げおよび取引意向の減退が生ずるおそれがある。 | 影響の程度:低 直接的な財務損失ではないが、長期的なブランド、信用およびステークホルダーからの信頼に影響を及ぼす リスク期間:長期(5年以上) のれんの形成または喪失は、過去の積み重ねによるものであり、短期的には不可逆的である | ||
物理的リスク | 短期的 大雨・洪水 | 工場は、新竹、高雄など水害高リスクエリアに位置している。台風や大雨に見舞われれば、工場敷地の冠水や設備への浸水が生じ、生産停止および施設損傷を招くおそれがある。 | 影響の程度:高 サプライチェーンへの納品遅延、操業の中断、生産能力の喪失を招くおそれがある | |
短期的 停電 | 台風および異常気象によって電力網の安定性が低下し、突発的な停電を招くおそれがある。 | 影響の程度:高 電力異常は、製造プロセスおよび設備に対する潜在的影響であり、予備電力およびUPS(無停電電源装置)を用意する | ||
長期 海面上昇 | 高雄工場は、沿海部に位置している。将来的に海面が上昇した場合、海水の侵入または地盤沈下が生じて建造物の基礎構造にとって脅威となり、インフラの安全性および保険コストに影響を及ぼす。 | 影響の程度:低 今後の工場用地選定評価および操業コストの構造に影響を及ぼす | ||
長期 温暖化 | 冷却システムの稼働負荷およびエネルギー消費のコストが増加する。設備の効率や寿命に影響するほか、製造過程において厳しい温度管理が求められる製品の品質安定性にとって脅威となる。 | 影響の程度:低 高温にさらされると、工場設備の温度が過度に高くなり、ダウンまたは焼損が生ずるおそれがある |
チャンスの内容 | 期間 | ||
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チャンス | 資源効率 | 効率的な製造設備、スマートエネルギーマネジメントシステムおよび製造プロセスの最適化を導入することにより、エネルギーや水使用の効率が高まり、製品1単位当たりのCO2排出および資源消費が抑えられる上、持続的なコスト削減および製造プロセス安定につながる。 | 短中期(1~3年) |
新エネルギー | 再生可能エネルギー(グリーン電力の購入、太陽光発電など)を積極的に評価し段階的に導入することにより、ネットゼロのトレンドに対応できるだけでなく、従来型エネルギーのリスク分散にも有益であり、電力供給の安定性を強化できる。 | 中長期(3~5年以上) | |
製品・サービス | 世界的に高まる低炭素製品および高エネルギーパフォーマンス製品への需要に対応するため、低消費電力・省エネ型のテスト技術における研究開発体制を強化し、持続可能な付加価値を備えた製品やソリューションを展開する。 | 長期(5年以上) | |
市場 | ESG意識の浸透に伴い、カーボンマネジメント能力やグリーン製造の実績を持つ企業は、より多くの調達や提携の機会を得ており、サステナブルなサプライチェーン市場の開拓やグローバルな顧客からの信頼向上に有利である。 | 中期(3年) | |
レジリエンス | ISO 22301事業継続マネジメントシステムを導入してあらかじめ気候リスク適応への適応策(バックアップメカニズム、緊急対応訓練など)を整備することで、事業中断リスクを引き下げ、サプライチェーンにおける継続的なサービス提供能力と競争優位性を高められる。 | 短中期(1~3年) |
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財務インパクト 1. 事業運営費 • 気候関係法令に対応するためのコンプライアンスコスト(例:炭素費用、炭素税)の増加
• 物理的リスクがもたらすメンテナンス費用(例:大雨による設備の損傷)の増加
• 投入が義務付けられている省エネ措置およびエネルギー転換のための支出(例:再生可能エネルギー調達)2. 資本的支出 • 低炭素化のために投入が必要な高額な設備アップグレード・代替コスト
• 物理的リスク下で設置しなければならないバックアップシステムおよびレジリエント施設(排水システム)
• グリーン製品の研究開発のための投資支出の増加3. 売上高 • 高まる顧客のESG調達要求に応えられない場合は受注または市場を失うおそれ
• グリーン製品の開発によって新たな市場の創出またはプレミアム価格で販売する機会を入手
• 天候に起因する納品の遅れによって顧客に満足度および収益の安定性に影響
4. 融資 • ESGパフォーマンスが市場の予想を下回り、または気候関連財務情報の開示が十分でない場合には借入金利および融資限度額に影響
• 気候リスクマネジメントの積極的な推進によってサステナビリティパフォーマンスが上昇し、グリーンファイナンス資源およびサステナビリティボンドの発行資格を取得
• 投資家が気候リスクを一層重視し、投資の魅力が低下して株価または増資の可能性に影響